場所も時代もバラバラな偉人や英雄が集う異世界「メモリア・テラ」で、軍を率いるプレイヤーたちが世界統一をかけて戦うリアルタイム戦略シミュレーションゲーム『異世界で始める偉人大戦争(通称:いじばと)』。
シシララTVでも実況プレイをお届けするほどのめり込み、応援してきたこの作品が、ゲームタイトルを『超偉人大戦(すーぱーいじんたいせん) ー異世界で始める偉人大戦争ー』に変更するという衝撃のニュースが飛び込んできた!
群雄割拠の戦場でプレイヤー同士が争ったり、同盟を組んで同じ道を歩んだりするのが楽しい本作。偉人たちのなかに史実と性別が逆転した美少女武将が登場したり、プレイヤーを見守る女神たちといきなり「野球拳」を楽しめたりと、カオスな世界観が大きな話題を呼んだ本作。
そんな『いじばと』が、リリースから1カ月半であえてタイトルを変更するという……。前代未聞の舵の切り方に、はたしてどんな意図が隠されているのか? 気になって仕方がなくなった我々は、本作の仕掛け人である伊藤ディレクター(以下、伊藤D)への直撃取材を敢行。結果、「本作がこのような“カオスな状況”を生み出すことになったのは、ゲームを手掛ける伊藤Dその人の個性によるものである」と強く認識することになる……。
そこで今回は、そんなカオスな取材模様をドキュメンタリー形式で、2回に分けて掲載することにした。後編ではプレイングサポーターたちの選別方法、そしてこの企画の根幹に迫る「タイトル変更の理由」について掘り下げていく!
前編はこちら→パチスロ×メイド喫茶が生み出した「萌えと戦略SLGの化学反応」
■プレイングサポーターのチョイスにも影響を与えたメイド喫茶体験
──パチンコホールにメイド喫茶、伊藤Dがインスピレーションを受ける場所はかなり個性的ですね。ビックリしました。今度メイド喫茶に連れて行ってくださいよ。
伊藤D「僕もしばらく行ってないので、ぜひ(笑)。ちなみに、メイド喫茶から受けたインスピレーションは「野球拳」だけじゃないんですよ。タイトルを『俺は英雄王になる』から『異世界で始める偉人大戦争』に変更することに決めたのも、メインビジュアルに萌えイラストを用いることを決めたのも、何より「いじばとプレイングサポーター」にアイドルを起用しようと考えたのも、きっかけはメイド喫茶でした」
「いじばとプレイングサポーター」、それは“共に戦い、共に成長する”をコンセプトに、『いじばと』を再興に盛り上げるパートナーとして対戦や同盟設立、ギルド対戦などのコンテンツに積極的に参加し、ゲームの楽しさやプレイのコツを伝えるべく選出されたメンバーのことを指す。
ちなみに、シシララTVの代表であるゲームDJもこのプレイングサポーターに就任して活動していた。なお、運用方針の変更にともない、この制度は2020年1月に一旦終了している。
──サポーターの面々はかなり思い切ったチョイスだと思っていましたが、その選定理由もメイド喫茶が由縁だったとは……。
伊藤D「正直なところ、あの人選はチーム内で心配の声もありました。でも、実際にサービスがスタートしてみたら、プレイングサポーターのみなさんがこちらの想定以上にゲームをしっかり遊んでくださり、盛り上げに貢献してくださったんですよ」
──ゲームDJは、実況生放送中に無理やりプレイングサポーターに就任していましたが、ゲーム自体にはドハマりしていましたからね。そういう方が多かったんだと思います。聞くところによると、プレイングサポーターのみならず、ファンやその周辺の方々もゲームにハマっていたとのことですが?
伊藤D「そうなんですよ。熱量の高い方をゲームに引き込んでくださったプレイングサポーターもおられるので、施策としては成功だったと思っています。……まあ、正直きっかけがきっかけなので、自分としてはあまり胸を張って言えることではないのかもしれませんが」
──いえ、お話を聞いたことで、一見無軌道に思えた施策の数々に筋道が見えた気がしますよ。すべては“萌え”によってもたらされたカオスだったのかな、と(笑)。
伊藤D「そうですね。リアルと萌え、両極端な要素をここまでなんの抵抗もなく詰め込んでいるのは、この作品だけだと自負しています。リリース当時、あまりに違和感がヤバすぎて、SNSで「コラ画像か!?」と驚かれたのも無理からぬことでしたね」
──ゲームキャストの管理人である寺島壽久さんが、そこらへんをバッチリ見抜いたツイートをされていましたね(笑)。寺島さんのツイート、かなり拡散されていたこともあって自分も目にしたのですが、すごく的を射た意見だったのでは?
伊藤D「おっしゃる通りです。寺島さんはしっかりとゲームをプレイし、ゲームシステムそのものを理解して評価してくれたうえで、“萌え”要素をネタ的に投下したことまで見抜かれていました」
──こんなお褒めの(?)ツイートもされていたようですけど?
伊藤D「優秀だと言っていただけるのはうれしかった半面、これを見抜かれてしまうのはやっぱり恥ずかしかったですよ。浅はかだと言われているようなものなので……(苦笑)」
──実際のところ本作は、遊べば遊ぶほどリアルタイム戦略シミュレーションとしてのクオリティの高さに注目が集まり、ゲーム性が高く評価されていくことになりました。……荒削りな部分はたくさんあるとはいえ、少なくとも最大のウリは“萌え”ではなく本格的なゲーム性であることは明白。それを指摘するユーザーもどんどん増えてきている印象です。
伊藤D「はい。結果的に、よかれと思って盛り込んだ“萌え”の要素が、かなり浮きまくることになってきてしまい、焦ることになってしまったわけです。はっきり言いますと、このプロモーション施策の方向性は失敗だったと考えています」
──「失敗だった」とまで言いきっちゃいます? そこまでご自身の心境を吐露してもらえるといっそ清々しいですけど、一定の効果もあったと思いますよ?
伊藤D「すべてが失敗だったとは思っていません。先ほどの言葉をより正確に言うと、SLG部分のゲーム性をプレイヤー様に評価されているのに、飛び道具的に盛り込んだ“萌え”の部分ばかりプッシュし続けていくのはもったいないのでは……と考えた感じですね」
──なるほど。しっくりきました。
伊藤D「そしてそこに気づかせてくれたのは、他ならぬプレイヤーのみなさんの声でした」
──プレイヤーさんの声……というと?
伊藤D「じつはゲームリリース後、本作をより大きく世に打ち出していくにあたりどういう戦略で臨むことがベストなのか、大いに迷っていたんです。“萌え”という飛び道具を今後も押し出していくべきなのか、それともしっかりと作られたゲーム性を押し出すべきなのか。自分では答えが出せなくて」
──なるほど。リリース後、本作のプロモーションが少し鳴りを潜めていたのはそこらへんに理由がありそうですね。
■迷走する戦略……光明を見出したのはプレイヤーの声
伊藤D「遊んでいただいたプレイヤー様からの反響がよく、ゲームとしての面白さを見込んでもらえて、会社からプロモーション費は確保できたところまではよかったのですが……」
──“萌え”とゲーム性、どちらを前に押し出すべきかがわからなくなった。舵きりに迷った結果、プロモーションに動くタイミングが遅れることになった、と?
伊藤D「そういうことです。そして、そんな僕の背中を押してくれたのがプレイヤーの皆様だった、と。じつは、迷走していた頃にこんなアンケートを実施させていただきまして」
Q.今後のアップデートでアナタが欲しいと思うキャラクターは?
Q.いじばとに求める世界観を教えてください。
──キャラクターは美少女や美女キャラに票が集まっていますが、世界観にかんしてはこのカオスな世界を貫いてほしいという声が多いですね。
伊藤D「はい。この“ごった煮感”をしっかり受け止めて肯定してもらえたことで、背中を押してもらえた感覚がありました」
──懐が深いプレイヤーさんが多いってことですよねぇ……。
伊藤D「もちろん、反省すべき点や改善すべき点はたくさんあるんですけど。萌え要素も、渋い英雄やゲーム性の高さもすべて含めて本作の魅力であると考えたら、進むべき道が見えてきた気がしたんです。そしてそれをわかりやすく表現するため、タイトルの変更を考えました」
──これまでは明らかに萌えに振り切っていた部分を、本格SLG寄りに是正しようという狙いでしょうか?
伊藤D「正解に近いですね。今後は本作のゲーム性の高さを押し出していく必要があると考えたわけです。その一方で『異世界で始める偉人大戦争』もサブタイトルとして残し、ゲームとしてはこれまで同様“萌え+リアルの本格SLG”が楽しめます。タイトルこそ変わりますけど、ゲームの本質が変わるわけではないんですよ。そこは安心していただければ」
──なるほど。正直なところ自分は伊藤Dにお話を聞くまで「ゲームタイトルが変更になる=うまくいっていない」と、ネガティブに考えてしまっていました。実際のところは、かなり前向きでポジティブなタイトル変更なんですね。
伊藤D「失敗してしまった部分は素直に認めますが、少なくともネガティブではないですね。一番近いニュアンスは“原点回帰”でしょうか。僕のようなSLG好きが遊んで楽しいゲーム、満足できるゲームであるということを、もっと自信を持ってアピールしようと考え、タイトル変更に至ったわけですから」
──土台として骨太なSLG要素が存在し、そこに美少女たちによる“萌え”の要素が上乗せされている。タイトルとサブタイトルの主従関係を考えても、そう言い切ってよさそうですね。
伊藤D「既存プレイヤーの皆様には驚きと疑念を抱かせてしまったかもしれませんが、引き続き美少女たちによる萌え要素は盛り込みつつ、SLGとしての面白さを追求していきます。そのための施策ということで、どうかご理解いただければ幸いです」
──わかりました! でも、タイトル変更に不安要素を感じたプレイヤーさんは少なからずおられると思いますので、伊藤Dはなんらかの形でケジメをつけるべきかもしれませんね(苦笑)。
伊藤D「僕もそれは考えていて。謝罪というのもおこがましいですが、ポケットマネーで可能な範囲でプレゼントキャンペーンを行うことを発表させていただきました」
──本気でポケットマネーでやるんですか? レムにお願いしてもっと白鯨を狩りまくらないといけませんね(笑)。
伊藤D「あと、キャンペーンツイートのRT数によっては、僕をキャラクターとして実装することも発表させていただいたわけですが……」
──シシララTVでの生放送で発表されたときはビックリしましたよ。まさに爆弾発言でした!(笑)
伊藤D「プレイヤー様も入手できるキャラにするのか、はたまた完全にエネミーとして実装するかまで含めて、まだまだ調整中です。番組でもお伝えしましたが、個人的には運営サイドにしか扱えない特別なチートキャラとして実装し、熟練プレイヤーたちでもなかなか乗り越えられないボス的な立ち位置で君臨するのもアリかな……なんて考えています」
──それは前代未聞な施策。でも、ものすごく面白そうですね。世の中にたくさんゲームはありますけど、運営サイドがチートキャラを実装してプレイヤーたちを蹴散らすというのは類を見ませんから、うまくやらないと賛否両論出てきそうですが(汗)。
伊藤D「そこはすごく慎重に考えていまして。たとえば専守防衛というか、自分からは攻め込んでこないけど、そのぶん超堅牢で簡単には倒せないキャラにするとか……。プレイヤーさまにとって嫌がらせになるのではなく、歯ごたえのある強敵として認識してもらえるバランスを実現できれば、本気で実装したいなと考えています」
──本当に面白そう! バランス調整は難しいと思いますが、その施策がうまくいけば、大きく話題を呼ぶ予感がします。ぜひ実現させてくださいね!
伊藤D「がんばります。詳細は公式Twitterやゲーム内のお知らせなどで告知していきたいと思いますので、楽しみにお待ちいただければ。プレイヤーの皆様、引き続き『超偉人大戦(すーぱーいじんたいせん) ー異世界で始める偉人大戦争ー』をどうぞよろしくお願いいたします!」
──本日はありがとうございました!
テキスト:タダツグ(Tadatsugu) シシララTV編集部、電撃編集部などで活動中のゲームライター/編集。生放送にも出演中。いつまでも少年の心を忘れないピーターパン症候群を自認するケツ合わせ系テキスト書き。好きなゲーム:『ニーア』シリーズ、『ヴァルキリープロファイル』シリーズ、『スターオーシャン』シリーズ、『メギド72』など多数。
ツイッターアカウント→タダツグ@TDB_Matsu
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